家族が「認知症」と診断されたら、誰でも動揺すると思います。
目の前が真っ暗になり「なぜあの人が?」」日頃の行いが悪かったのではないか?」と、まずは原因を知りたくなると思います。
でも認知症、アルツハイマー病の原因は、専門家ですら明確には分かってないんです。それがアルツハイマー病。過去を後悔するよりも大事なのは、これからどう家族と寄り添って生きていくか、です。
認知症とは何か (岩波新書)
「認知症とは何か(岩波新書)」は、精神科医の小澤 勲さんが著者の、不朽の名作です。
第一部では、医学的で客観的な認知症の知識が丁寧に書かれていて、第二部では、体験としての認知症について書かれています。
一部では知識を深め、
二部で認知症を患った人の内側から認知症を見て(体験し)、
彼らの気持ちによりそったケアをしてくことで、むりをしないことで、なんとか介護と生活の折り合いをつけているひともいる、と認知症患者とその介護にあたる人を励ます文章になっています。
「認知症」をテーマにした映画や小説はたくさんあるし、私もいくつか読んだことがありますが、やっぱり映画や小説はフィクションですよね。
映画の中の世界はやっぱりキラキラ綺麗だし、小説もハッピーエンド。
「認知症」について本当のところを知りたいっていう人は、映画や小説をみるんじゃなくてこの本を読むのが1番良いと感じます。
特にためになった箇所を、いくつか自分のメモ用に引用していきます。
第一部:認知症の医学
認知症は、大きく「変性疾患(アルツハイマー病)」と「脳血管性認知症」の2つに分かれている。
変性疾患(アルツハイマー病)
・変性疾患(アルツハイマー病)の場合は、脳の全体に萎縮がみられるので、早い段階で知識が失われ子供のような状態になってしまうことが多い。
・集団のペースに載せて、大勢でにぎやかに、がやがやと生活していくのがよく、肩を組んだり、手を繋いだりして身体接触を密にするのが良い
脳血管性認知症
・脳血管性認知症の場合は、一部だけが萎縮しているので、「まだらぼけ」の状況が起こりやすい。
(例えば、仕事のある瞬間、的確な指示を出したりして、介護にあたる家族を動揺させたりする)
・「脳血管性認知症」の場合、病を患う前と比べて人柄が全く変わってしまうことがある
・デイケアなどで、アルツハイマー病の患者と一緒にすると癇癪をおこしやすい(一対一のケアが良い)
・プライドが高く、自己主張を押し通そうとする
告知について
・認知症の初発症状として周囲に気づかれる記憶障害は、エピソード記憶の障害であることが多い
・日本では、本人ではなくまず家族に話をし、家族から、本人に告知をするかどうかの判断がされるが、このようなことを欧米の専門家にお話すると不思議そうな顔をされる。
「病人は本人に属する情報だろう?本人には伝えるけれど、本人の要請で、家族や周囲には伝えないでくれ、と言われて家族への告知を行わないというならわかるけれど、その逆はおかしいのではないいか(欧米の専門家)」
その他認知症にまつわるオススメの本
ノンフィクション
小説
最後に
2年ほど前に、親戚の身近な人が若年アルツハイマーと診断されました。
目の前が真っ白になり、苦しく、同時に自分が健康で毎日過ごせることのありがたさを再確認しました。
自分の身近になった「認知症」についてもっと知りたい。いつか彼らが自分に助けを求めることがあったなら、精神的な助けになってあげられるよう知識を付けておきたい、と思いこの本に出会いました。
まだ何の役にも立っていないけれど、他人事にせず、関心を持ち続けたいと思います。
私たちは、まだまだ小さな点に過ぎないだろうが、豊かな「虚構の世界」をあちこちに作り出し、それがいずれはこの社会のかたくなな枠組みを変えるに違いないと楽観的に信じるしかない。
私たちがやれることは絶望的なまでに小さい。
しかし、そこからしか希望は生まれないのだ。_____小澤 勲
コメント
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